どう見ても他殺なのに、自殺処理されたのを目の当たりにした件

俺の中学校の頃の同級生の女の子は、十中八九殺された。

特別仲がよかったってわけじゃないけど、中学卒業後も街中で会えばカフェとかよって話する程度の仲だった。

彼女は俺の自宅近所のコンビニでバイトしていて、高校の頃なんかは前を通るとガラス越しに手を振ってくれたり、愛想も良いし、可愛いこだった。

就職して数年経った頃、別の同級生だった女子から電話があり、彼女が亡くなったことを知らされた。

すごくショックだった。

まだ20代だったし。

死因については今から数名で集まってから話したいとのことで、会社か帰りに集まりの場所によることになった。

そこには同級生だった女子の半数強が集まっており、男は俺だけだったから、かなり気まずかったけど、ことがことだけにおちゃらけることもできずに、深刻な顔で参加した。

結果、ある男性の家の押入れの中で、腹部を刃物で複数回刺された状態の遺体が発見されたとのこと。

発見者はご両親とのこと。

警察は「自殺」として処理したとのこと。

え?

じ・さ・つ?

意味わからない。

腹部を刃物で自分で複数回刺して自殺?

どんだけサムライだよ。

20代の若い女の子がそんな自殺するかよ。

ていうかできるかよ。

みんなを集めて報告ってなったのも、この警察の自殺という判断が納得いかなく、なんとかひっくり返して、警察に捜査させられないかという相談のためだったらしい。

とりあえず当時からそこそこだけど仲良くしていた女の子が亡くなったんだし、しかも殺された可能性が高いんだから、俺自身も警察の判断には納得いかず、憤りを覚えた。

殺された場所が、当時付き合っていた男性の部屋の押入れなんだから、まずその男性を疑うのが普通だが、証拠やアリバイなどの関係で、捜査線上から除外されたのだろうか?

報告してくれた女子は、彼女から付き合っている男性からの日常的な暴力などの相談を受けていたらしく、その男性を犯人だと決めてかかっている。

決めつけは少々危険だが、状況的には確かにその男が最も怪しいのは確かだ。

その日は基本的な報告と状況説明で終了して解散した。

仕事も忙しく、どう動いたら良いものか考える程度しかできない状態で1週間が過ぎた頃、再度召集の連絡が来た。

行ってみると、そこには彼女のご両親がいた。

「みなさん、娘のためにこんなに集まってくれて、本当にありがとうございます。娘はとっても良いお友達に恵まれて、本当に幸せだったと思います。この度娘は、悲しい結果になってしまいしたが、みなさんと一緒だった学生生活は本当に楽しかったはずです。みなさんが警察の判断に納得いかないのも良くわかりますが、この件は、これで終わりにしていただけませんでしょうか。私たちも悔しい気持ちはありますが、これ以上蒸し返したくないんです。終わったことにして、そっとしておきたいんです。本当にありがとうございます。でも、ごめんなさい」

ご両親はそう言って、深々と頭を下げた。

俺はバカだったかもしれない。

というか、バカだった。

確かにおかしいとは言え、警察が判断して終わらせた事件をたかだか20代の同級生の集まりがどうにか覆すのは、それこそ仕事をほっぽり出してやっても難しいことなんだ。

そして仮にそれをやったとしても、ご両親に思い出したくないことをたくさん聞かなきゃいけないだろう。

娘を失った悲しみを、一刻も早く薄れさせ、思い出に変えて、前を向いて歩き出さなきゃいけないご両親を、いつまでも留めておくような行為なのかもしれない。

完全なエゴだったんだろう。

まだまだ納得のいかない同級生もいたが、それでこの件は終了した。

結局この件を深く掘り下げることはなかったが、世の中で自殺と判断されたケースの何割かは、この件のように殺人の可能性の高いのもあるのだろう。

ネットでいくつか見たことのある、エクストリーム自殺ってやつ?まさにあの類の事件だ。

まさか自分の身近で起こるとは考えていなかったが、エクストリーム自殺の話を聞くたびに、彼女のことが思い出される。

天国というものが本当にあるのなら、せめてそこでは良い男性と知り合って、幸せになっていてほしいと、本気で願っている。